エシカルファッションの表示を読み解く:買い物のヒントになるタグや認証マーク
エシカルな服選びを始めるヒント:表示に注目する
エシカルファッションに関心を持ち始めたものの、実際にどのような服を選べば良いのか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。多岐にわたるエシカルファッションの要素の中で、比較的取り組みやすい第一歩として、「服についている表示に注目する」という方法があります。
服のタグやラベルには、素材や製造国、取り扱い方法など、様々な情報が記載されています。これらの表示は、その服がどのように作られ、どのような背景を持っているかを知るための重要な手がかりとなり得ます。特に近年では、環境や社会への配慮を示す認証マークや独自の表示が増えています。これらの表示を読み解くことで、より意識的な服選びが可能になります。
この記事では、エシカルな視点から服の表示を見る際に役立つ基本的な知識や、代表的な認証マークについて解説します。
服の表示が教えてくれること
私たちが普段手に取る服には、品質表示タグや洗濯表示タグなど、いくつかのラベルがついています。これらの表示から得られる情報の中には、エシカルな側面を知るヒントが含まれています。
1. 素材
最も基本的な表示の一つが素材です。「綿100%」「ポリエステル」「麻」といった情報が記載されています。素材によっては、その栽培や製造過程で環境への負荷が大きいもの、あるいは比較的低いものがあります。例えば、一般的な綿栽培では大量の水や農薬が使われることがありますが、オーガニックコットンであれば、こうした環境負荷を抑えることができます。リサイクル素材や再生繊維などが使用されている場合も、環境への配慮がうかがえます。
2. 製造国
「Made in [国名]」という表示は、その服がどこで作られたかを示しています。必ずしも製造国だけで全てを判断できるわけではありませんが、特定の国や地域における労働環境、賃金、労働者の権利などが、エシカルな観点から注目されることがあります。どのような環境で働く人々によって服が作られているのか、想像を巡らせるきっかけになります。
3. 取扱い表示
洗濯や乾燥、アイロンの方法を示すマークです。適切にお手入れすることで、服を傷めずに長く着用することができます。服を大切に長く着ることは、エシカルファッションの重要な柱の一つです。表示に従って丁寧にお手入れすることで、服の寿命を延ばし、買い替えの頻度を減らすことにつながります。
エシカルな側面を示す認証マークや表示
素材や製造国といった基本的な表示に加え、近年はエシカルやサステナブルな取り組みを具体的に示す認証マークやブランド独自の表示が増えています。これらは、その服や製造プロセスが特定の基準を満たしていることを第三者機関やブランド自身が示しているものです。
代表的な認証マーク
認証マークは、特定の分野(環境、労働、素材など)における基準を満たしていることを示す信頼性の高い情報源の一つです。全てを覚える必要はありませんが、いくつか代表的なものを知っておくと、服選びの参考になります。
- GOTS (Global Organic Textile Standard): オーガニック繊維製品のための世界的な基準です。原料の収穫から製造、販売に至るまでの工程で、化学物質の使用、環境負荷、労働条件などに厳しい基準を設けています。オーガニック素材であることだけでなく、その後の工程もエシカルであるかどうかの目安になります。
- OEKO-TEX (エコテックス): 繊維製品に有害な化学物質が含まれていないことを証明する世界的な認証システムです。様々なレベルがありますが、特に「STANDARD 100 by OEKO-TEX」は、消費者にとって安全な製品であることを保証します。環境負荷低減や労働環境に関する認証もあります。
- Fairtrade Cotton (フェアトレードコットン): フェアトレード基準に則って栽培されたコットンであることを示すマークです。コットン農家が適切な価格で取引され、労働環境や地域社会の発展にも配慮されていることを示します。
- Bluesign: 繊維製品の生産工程において、環境、労働、消費者保護に関する厳しい基準を満たしていることを証明するシステムです。製造工程全体での環境負荷を最小限に抑えることを目指しています。
これらの認証マークが付いている製品は、一定のエシカルな基準を満たしている可能性が高いと言えます。ただし、認証マークの種類によって重視する側面が異なるため、どのような基準で認証されているのかを少し調べてみることも有効です。
素材に関する具体的な表示
- オーガニックコットン: 有機栽培された綿花を使用していることを示します。一般的な栽培に比べて、農薬や化学肥料の使用を大幅に削減しています。
- リサイクル素材: ペットボトルや漁網、古着などから再生された繊維を使用していることを示します。廃棄物の削減に貢献します。
- 再生繊維(リヨセル、モダールなど): 木材パルプなどを原料とする繊維で、比較的環境負荷の低い方法で作られるものがあります。製造方法によっては環境への影響が異なるため、詳細はブランドの情報を確認すると良いでしょう。
ブランド独自の表示や情報
認証マーク以外にも、ブランド自身がエシカルな取り組みをアピールするために独自の表示やロゴを使用している場合があります。「リサイクル素材使用」「トレーサビリティ確保」「環境配慮素材」など、具体的な取り組み内容が書かれていることもあります。
こうしたブランド独自の表示を見る際は、それが具体的にどのような取り組みに基づいているのか、透明性があるかを確認することが望ましいです。ウェブサイトなどで詳細な情報を公開しているブランドであれば、より信頼性が高いと考えられます。
表示を見る上での注意点
表示はエシカルな服選びの重要なヒントになりますが、表示だけが全てではない点に留意が必要です。
- 全ての情報が載っているわけではない: タグのスペースには限りがあり、その服の製造に関わる全てのエシカルな側面(例えば、縫製工場の労働者の賃金や労働時間など)が詳細に記載されているわけではありません。
- グリーンウォッシュの可能性: 中には、実際には環境や社会への配慮が不十分であるにも関わらず、表面的な表示や謳い文句でエシカルであるかのように見せかける「グリーンウォッシュ」の事例も存在します。表示だけでなく、ブランド全体の情報発信や哲学に注目することも大切です。
まとめ:表示をヒントに、自分にとってのエシカルを見つける
エシカルファッションの表示は、服が持つ背景を知り、より良い選択をするための貴重な手がかりです。特に認証マークは、一定の基準を満たしていることの目安となります。
まずは、普段の買い物の際に服の表示をじっくり見てみること、気になる表示があれば少し調べてみることなど、小さな一歩から始めてみるのはいかがでしょうか。全ての表示の意味を理解したり、完璧なエシカルな服だけを選んだりする必要はありません。表示をヒントに、「この素材は環境に優しいのかな」「このマークは何だろう?」と関心を持つことから、エシカルな視点での服選びは始まります。
古着を選んだり、今持っている服を大切に長く着たりすることと同様に、表示に注目する行動も、自分にとって無理なく続けられるエシカルファッションへの取り組み方の一つです。様々な情報源を活用しながら、ご自身の価値観に合ったエシカルな選択肢を見つけていただければ幸いです。