はじめてのエシカルファッション:「サステナブル」と「エシカル」の違いとは?
エシカルファッションに関心を持つ中で、「サステナブル」という言葉も耳にする機会が多いのではないでしょうか。これらの言葉は似たような文脈で使われることがあり、時に混同されがちです。しかし、それぞれが持つ意味合いには違いがあり、その両方を理解することが、より多角的な視点でファッションと向き合うための基礎となります。
この記事では、「サステナブル」と「エシカル」それぞれの概念を整理し、両者の関連性について分かりやすく解説します。これらの言葉の意味を正しく知ることは、これからの服選びにおいて、より意識的な判断をする助けとなるでしょう。
サステナブルファッションとは:環境への配慮
まず、「サステナブルファッション」について考えてみましょう。「サステナブル(Sustainable)」とは、「持続可能な」という意味です。したがって、サステナブルファッションは、地球の資源や環境に配慮し、将来にわたってファッション産業が存続できるようにすることを目指しています。
具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 素材の選択: 環境負荷の少ない素材を選ぶことです。例えば、有機栽培されたオーガニックコットン、リサイクル素材(ペットボトルや漁網から再生された繊維など)、栽培に使う水の量が少ないリネンやヘンプなどが挙げられます。化学肥料や農薬の使用を減らす、マイクロプラスチック問題に配慮するといった視点も含まれます。
- 生産プロセスの改善: 服を作る過程での環境負荷を減らす取り組みです。大量の水や化学物質を使用する染色工程の見直し、エネルギー効率の良い工場の運営、CO2排出量の削減などが該当します。
- 製品の寿命: 長く着られる丈夫な服を作ること、そしてリサイクルやアップサイクルしやすいデザインにすることです。服がすぐにダメになり捨てられてしまうことを減らし、廃棄物の削減を目指します。
サステナブルファッションは、主に「地球環境への影響」に焦点を当てていると言えます。
エシカルファッションとは:人・社会・動物への配慮
次に、「エシカルファッション」についてです。「エシカル(Ethical)」とは、「倫理的な」「道徳的な」という意味です。エシカルファッションは、服に関わる全ての人々や動物、そして地域社会に対して、倫理的に正しい方法で生産・流通されることを目指しています。
具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 労働環境: 服を作る工場の労働者が、安全な環境で、公正な賃金を受け取り、適切な労働時間で働けるようにすることです。強制労働や児童労働を排除し、労働者の権利を尊重します。
- 人権: サプライチェーン全体に関わる人々の人権を守ることです。原料の生産者から、縫製工場の労働者、販売員に至るまで、関わる全ての人々が尊厳を持って扱われることを目指します。
- 地域社会への貢献: 生産地やブランドの拠点となる地域社会に、経済的・社会的に貢献することです。伝統技術の継承や地域雇用の創出なども含まれます。
- アニマルウェルフェア: 動物由来の素材を使用する場合に、動物たちが人道的に扱われているかに配慮することです。例えば、強制的な給餌が行われていないか、生きたままの毛皮採取が行われていないかなどが考慮されます。
エシカルファッションは、主に「人権や労働環境、動物福祉など、倫理的な側面」に焦点を当てていると言えます。
サステナブルとエシカル:共通点と違い、そして重なり
サステナブルファッションが「環境」、エシカルファッションが「人・社会・動物」に主に焦点を当てているという違いがあります。しかし、現代のファッション産業が抱える課題は、環境問題と社会問題が複雑に絡み合っています。例えば、水質汚染を引き起こす化学物質の使用は環境問題ですが、それが労働者の健康を害したり、地域住民の生活用水を汚染したりすれば、同時に人権や社会の問題にもなります。
そのため、「サステナブル」と「エシカル」は、しばしば密接に関連し、重なり合う概念として捉えられています。多くのエシカルなブランドは、環境にも配慮した素材を使用するなど、サステナビリティの視点も同時に持っています。逆に、サステナブルな素材を使っていても、その生産過程で労働者の権利が守られていない場合は、エシカルとは言えません。
つまり、完全に切り離せるものではなく、持続可能なファッション産業を実現するためには、環境への配慮(サステナビリティ)と、人や社会への倫理的な配慮(エシカル)の両方の視点が不可欠なのです。
服を選ぶ際に「サステナブル」と「エシカル」の視点をどう活かすか
これらの違いと関連性を理解した上で、私たちが普段の服選びにどのように活かせるでしょうか。
完璧である必要はありませんが、服を選ぶ際に少し立ち止まり、以下の点を考えてみることが、エシカルかつサステナブルな選択への第一歩となります。
- その服は何からできているか?: 素材に注目してみましょう。オーガニックコットンやリサイクル素材が使われているか、環境負荷の大きい素材が使われていないかなどです。
- 誰が、どのような場所で作ったか?: タグやブランドのウェブサイトで、生産国や工場の情報、労働環境への配慮に関する方針などが公開されていないか調べてみましょう。「フェアトレード認証」など、人権や労働環境に配慮していることを示す認証マークも参考になります。
- 長く着られるか?: デザインや品質を確認し、流行に左右されず長く愛用できそうか考えてみましょう。安価であってもすぐに着られなくなる服は、結果的に環境負荷や経済的な負担になることがあります。
- ブランドの姿勢は?: そのブランドが、環境問題や社会問題に対してどのような考えを持ち、どのような取り組みを行っているかを調べてみることも有効です。情報公開に積極的なブランドは、信頼できるヒントとなります。
これらの視点は、お店で服を手に取った時、あるいはオンラインで商品を見ている時に、少し意識するだけで取り入れられるものです。
まとめ
「サステナブルファッション」が主に環境への持続可能性に焦点を当てる一方、「エシカルファッション」は人や社会、動物に対する倫理的な側面に焦点を当てています。しかし、両者は密接に関連しており、現代のファッションが抱える課題解決にはどちらの視点も欠かせません。
これらの言葉の意味を理解することは、私たちが消費者としてどのような服を選ぶか、そしてその選択が世界にどのような影響を与えるかを考える上で、非常に重要な基礎知識となります。
今日から、服を選ぶ際に「これはサステナブルな視点からどうか?」「これはエシカルな視点からどうか?」と少し立ち止まって考えてみませんか。その小さな意識の変化が、ファッションを通じてより良い未来を作る一歩に繋がるはずです。