着なくなった服のゆくえ:大量廃棄問題を知り、エシカルな選択を
着なくなった服のゆくえ:大量廃棄問題を知り、エシカルな選択を
私たちのクローゼットには、いつか着ようと思って手に入れたけれど、結局着る機会が少ない服、サイズが合わなくなった服、流行遅れになってしまった服など、様々な理由で眠っている服があるかもしれません。これらの服は、やがて私たちの手元を離れ、いったいどこへ向かうのでしょうか。
残念ながら、多くの服がまだ着られる状態であるにもかかわらず、ゴミとして処分されているのが現状です。ファッション業界における「大量生産・大量消費・大量廃棄」のサイクルは、地球環境や人々の暮らしに大きな負担をかけています。
この記事では、着なくなった服にまつわる大量廃棄問題の現状と、なぜこのような状況が生まれるのかを解説します。そして、私たち一人ひとりがこの問題に対してできる具体的なエシカルな選択肢について考えていきます。
服の大量廃棄問題の現状
世界中で生産される服の量は年々増加しています。そしてその多くが、短期間で消費され、そして廃棄されています。試着室から出たばかりの新品であっても、不良品であったり、店頭に並びきらなかったり、セール期間を過ぎたりした服がそのまま廃棄されることも少なくありません。
また、消費者の手元に渡った服も、一度も袖を通されないまま、あるいは数回着られただけで捨てられてしまうケースが多く見られます。このような大量廃棄は、単に「もったいない」というだけでなく、以下のような深刻な問題を引き起こしています。
- 環境負荷: 服の製造には大量の水やエネルギーが使われ、染色などによる水質汚染も発生します。また、廃棄された服の多くは焼却または埋め立てられますが、その際に温室効果ガスが発生したり、有害物質が土壌や地下水に染み出したりする可能性があります。特にポリエステルなどの化学繊維は分解されにくく、環境中に長く残存します。
- 資源の無駄: 服の原料となる綿花栽培には広大な土地と大量の水が必要です。石油由来の化学繊維も有限な資源に依存しています。大量廃棄は、これらの貴重な資源を無駄にしていることになります。
- 労働問題: 大量生産・大量消費のビジネスモデルは、製造コストを抑えるために、開発途上国の工場で働く人々に対して劣悪な労働環境や不当な賃金といった問題を引き起こす一因とも言われています。
なぜ服は大量に廃棄されるのか
服の大量廃棄が起こる背景には、いくつかの要因があります。
- ファストファッションの影響: トレンドの移り変わりが早く、安価な服が大量に提供されるファストファッションは、消費者が短いサイクルで新しい服を購入しやすい環境を作りました。これにより、古い服がすぐに不要になる傾向が強まりました。
- 供給過多: ブランドや小売店が需要を予測して生産する量と、実際に販売できる量に乖離が生じることがあります。売れ残った服は、保管コストやブランドイメージの維持などの理由から廃棄される選択が取られることがあります。
- 消費者の意識: 服を「消耗品」として捉える意識が広がり、手軽に買っては捨てるという行動につながっています。また、着なくなった服の適切な手放し方を知らない、あるいは手間をかけたくないという理由から、簡単に捨ててしまう人もいます。
私たち一人ひとりができるエシカルな選択
服の大量廃棄問題は規模が大きいですが、私たち一人ひとりの日々の選択が、この状況を変える力を持っています。エシカルファッションを始める第一歩として、まずは「捨てる」以外の選択肢を意識してみましょう。
1. 無駄な買い物を減らす習慣を身につける
最も効果的なのは、そもそも不要な服を手に入れないことです。「本当に必要か」「長く着られるか」「手持ちの服と合わせられるか」などをじっくり考えてから購入する習慣をつけましょう。衝動買いや、安いからという理由だけで服を買うことを見直してみるのが良いでしょう。
2. 手持ちの服を大切に長く着る
今持っている服を、できるだけ長く良い状態で着続けることは、新しい服を買う頻度を減らし、結果的に廃棄を減らすことに繋がります。 * 適切なお手入れ: 洗濯表示を確認し、服の素材に合った方法でお手入れすることで、服は長持ちします。 * 修理や補修: ボタンが取れた、裾がほつれたといった場合も、捨てるのではなく修理することを考えましょう。自分でできなくても、洋服のお直し屋さんにお願いする方法があります。 * リメイク・カスタマイズ: 着なくなった服も、少し手を加えることで新たな服に生まれ変わらせることができます。丈を詰めたり、デザインを変えたり、別のアイテムに作り替えたりすることで、再びお気に入りの一着として活躍させられる可能性があります。低予算で創造性を発揮できる方法です。
3. 賢く手放す方法を選ぶ
どうしても不要になった服も、「捨てる」以外の様々な手放し方があります。 * リユース: * フリマアプリや買取サービス: 状態の良い服は、フリマアプリで販売したり、古着の買取サービスを利用したりすることができます。次に着てくれる人へ渡す最も直接的な方法です。 * 古着店やリサイクルショップへの持ち込み: 自分で販売する手間を省きたい場合に適しています。 * 友人や家族に譲る: 身近な人に必要としている人がいないか聞いてみるのも良い方法です。 * リサイクル: * 繊維リサイクル: 着られなくなった服を回収し、新しい繊維や工業用資材などに生まれ変わらせる取り組みがあります。自治体やアパレルブランドが回収ボックスを設置している場合があります。 * 寄付: * まだ着られる状態の服であれば、NPOや支援団体などを通じて必要としている人々へ寄付することも可能です。
4. 生産背景に配慮された服を選ぶ
新しく服を購入する際は、大量生産・大量廃棄のサイクルに加担しないようなブランドや、服がどのように作られているか(素材、労働環境など)に配慮しているブランドを選ぶこともエシカルな選択です。これはすぐに全ての買い物を変えるのが難しくても、少しずつ意識することで、ファッション業界全体に良い影響を与えることに繋がります。信頼できるブランドの選び方については、別の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
着なくなった服の多くが廃棄されているという現状は、私たちの消費行動と深く関わっています。しかし、この問題に対して無力であるわけではありません。
無駄な買い物を減らし、今持っている服を大切に長く着る。そして、不要になった服も、安易に捨てるのではなく、リユースやリサイクルといった方法を選ぶ。こうした私たち一人ひとりの小さな意識と行動の変化が積み重なることで、服の大量廃棄問題の解決に貢献し、よりエシカルでサステナブルなファッションのあり方を実現していくことができるのです。
まずは、クローゼットの中の服と向き合うことから始めてみませんか。そして、これからの服との付き合い方について、少しだけ立ち止まって考えてみましょう。完璧を目指す必要はありません。できることから、一つずつ始めていくことが大切です。