はじめてのエシカルファッション

服の「一生」を知る:生産から廃棄まで、エシカルな選択のヒント

Tags: エシカルファッション, 服, ライフサイクル, 環境問題, 労働問題

私たちは毎日、様々な服を身につけています。クローゼットにある服が、どのようにして手元に届き、そして最後はどうなるのか、深く考えたことはあるでしょうか。エシカルファッションは、単に特定のブランドの服を買うことだけではなく、この「服のライフサイクル」、つまり服が生産されてから、私たちの手に渡り、そして最終的に手放されるまでの全ての段階に関わる考え方です。

この「服のライフサイクル」を知ることは、なぜエシカルな選択が必要なのかを理解する上で非常に重要です。服の旅路をたどることで、ファッション業界が抱える環境問題や社会問題が見えてきます。ここでは、服の生産から廃棄までの主な段階と、それぞれの段階で私たちがどのようなエシカルな選択ができるのかを解説します。

服の生産段階で起きていること

私たちが着る服の旅は、まず素材の生産から始まります。天然繊維であれば農場で、化学繊維であれば工場で、様々な資源やエネルギーを使って作られます。

素材の生産と環境負荷・労働問題

生地製造・染色・縫製工場での課題

素材が繊維になり、糸が紡がれ、生地が織られ、そして染色されます。これらの工程でも、大量の水が使用され、化学物質が排水として環境に排出されることがあります。特に染色は大量の水質汚染の原因となり得ます。

その後、生地は世界中の縫製工場に運ばれ、デザイン通りに裁断・縫製されて服になります。この縫製工場では、低賃金、長時間労働、危険な作業環境など、労働者の人権に関わる深刻な問題が長年指摘されてきました。私たちが安価な服を購入できる背景には、このような過酷な労働環境が存在する可能性があるのです。

生産段階でできるエシカルな選択肢

服の輸送・流通段階

生産された服は、多くの場合、世界中を輸送されて私たちの手元に届きます。この輸送には、船、飛行機、トラックなどが使用され、CO2排出による環境負荷が発生します。また、過剰な生産は在庫を積み上げ、最終的にセールや廃棄につながる可能性があります。

流通段階でできるエシカルな選択肢

服の消費・使用段階

私たちは服を購入し、着用し、お手入れをします。この段階での私たちの行動は、服の「一生」の長さや、環境への影響に大きく関わります。

大量消費と使い捨ての問題

ファストファッションに代表されるように、安価でトレンドを取り入れた服が次々と販売され、短いサイクルで消費される傾向があります。これにより、服は「流行遅れになったら捨てるもの」といった認識を生み、大量廃棄につながっています。

消費・使用段階でできるエシカルな選択肢

服の廃棄段階で起きていること

役目を終えた服や、もう着なくなった服は、最終的に手放されます。この廃棄の段階も、環境や社会に大きな影響を与えます。

大量廃棄の現実

日本では年間で大量の服が廃棄されていると言われています。これらの服の多くは焼却されたり、埋め立てられたりします。焼却は温室効果ガスを排出し、埋め立ては土地を圧迫し、化学物質が土壌や地下水を汚染する可能性があります。一部はリサイクルやリユースされますが、その割合はまだ十分とは言えません。また、多くの古着が海外に輸出されますが、品質の低いものは現地で引き取り手がなく、結局廃棄されるという問題も起きています。

廃棄段階でできるエシカルな選択肢

まとめ:服の「一生」を知ることが、エシカルな選択の第一歩

私たちが何気なく着ている服は、その生産から廃棄に至るまで、地球環境や人々の労働環境と密接に関わっています。この「服のライフサイクル」を知ることは、エシカルファッションを始める上で非常に重要な視点を与えてくれます。

エシカルな選択は、何も特別なことではありません。今日から、目の前の服がどのような過程を経てきたのか、そしてこれからどうなるのか、少しだけ意識を向けてみることです。新しい服を買うときに素材やブランドを調べてみる、手持ちの服を大切にお手入れする、着なくなった服を捨てる以外の方法を考えてみる。これらの小さな一歩が、服の「一生」を変え、より良い未来につながるのです。

完璧を目指す必要はありません。まずは、あなたが無理なく始められることから取り組んでみてください。服の「一生」を知る旅は、エシカルファッションという新しい世界への扉を開いてくれるはずです。