はじめてのエシカルファッション 手持ちの服を長持ちさせる賢い保管術
エシカルファッションを実践する上で、「今持っている服を大切に長く着る」ことは非常に重要な考え方です。新しい服を選ぶ際の基準だけでなく、手元にある服の寿命を延ばす工夫も、私たちのクローゼットをよりエシカルなものへと変えていく一歩となります。服を長く着続けるためには、日頃のお手入れだけでなく、適切な保管方法も欠かせません。
このガイドでは、エシカルな視点から見た、手持ちの服を傷めずに美しく保つための賢い保管術をご紹介します。特別な技術や高価な道具は必要ありません。少しの意識と工夫で、大切な服たちと長く付き合っていくことが可能になります。
なぜ服の保管がエシカルな選択につながるのか
私たちが一枚の服を捨てることは、資源の無駄遣い、製造に関わった人々や環境への負荷につながります。服の生産には大量の水やエネルギーが消費され、化学物質が使用されることもあります。また、衣類廃棄物は環境汚染の一因ともなっています。
服の寿命を延ばし、一枚を長く着ることは、その服を新たに生産する必要を減らすことにつながり、結果として環境への負荷を軽減することになります。つまり、手持ちの服を丁寧に扱い、適切に保管することは、新しい服を頻繁に購入しないというエシカルな消費行動を物理的に支える基盤となるのです。
保管の基本:しまう前の準備
服を長く良い状態で保つための保管は、しまう前の準備から始まります。
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洗濯またはクリーニングをする 一度袖を通した服には、目には見えない皮脂や汗、ほこりなどが付着しています。これらをそのままにしておくと、黄ばみやカビ、虫食いの原因となります。必ず洗濯表示を確認し、適切に洗濯またはクリーニングをしてからしまいましょう。特に、衣替えなどで長期間しまう場合は、しっかりと汚れを落とすことが重要です。
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しっかりと乾燥させる 湿気はカビの大敵です。洗濯した服は、完全に乾いてからクローゼットや引き出しにしまいましょう。生乾きのまましまうと、嫌な臭いの原因になるだけでなく、カビが発生しやすくなります。
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汚れや傷がないかチェックする しまう前に服の状態を確認する習慣をつけましょう。小さなシミやほつれであれば、しまう前に手当てすることで、次に着るときに気持ちよく着用できます。また、傷みを発見することで、その服を今後どのように扱うか(修理するか、別の用途に転用するかなど)を考えるきっかけにもなります。
服を傷めずに美しく保つ保管方法
準備が整ったら、いよいよ保管です。服の種類や素材に合わせて、いくつかのポイントがあります。
1. ハンガーの選び方と使い方
型崩れを防ぐために、服に合ったハンガーを選びましょう。
- 肩に厚みのあるハンガー: ジャケットやコートなど、肩のラインをきれいに保ちたいアウター類に適しています。
- 滑り止め付きハンガー: シルクやニットなど、滑り落ちやすい素材の服に有効です。
- プラスチックやワイヤーハンガー: シャツやブラウスなど、比較的軽量な服には使用できますが、重い服に使用するとハンガー自体が変形したり、服にハンガー跡がついたりすることがあります。できるだけ木製やしっかりしたプラスチック製のハンガーを選ぶのがおすすめです。
- ボトムスは、クリップ付きハンガーやバー付きハンガーを使って吊るすと、シワになりにくくスペースも有効活用できます。
2. 畳み方と収納方法
ハンガーにかけるスペースが限られている場合や、伸びやすい素材の服は畳んで収納します。
- 畳み方: シワになりにくいように、服の形を意識して丁寧に畳みましょう。ニットなど伸びやすい素材は、畳んで引き出しや棚にしまう方が型崩れを防げます。
- 収納: 引き出しや収納ボックスにしまう際は、詰め込みすぎないように注意が必要です。詰め込みすぎると服に負担がかかり、シワや傷みの原因になります。立てて収納すると、どこに何があるか把握しやすく、取り出す際も他の服を崩しにくくなります。
3. 素材別の注意点
素材によってデリケートな扱いが必要な場合があります。
- ニット: 畳んで収納するのが基本です。ハンガーにかけると自重で伸びてしまうことがあります。虫食いに遭いやすい素材でもあるため、防虫対策はしっかりと行いましょう。
- シルク、カシミヤなどのデリケート素材: 直射日光や蛍光灯の光、湿気、虫食いに弱いため、風通しの良い暗所に保管し、防虫剤を忘れずに入れましょう。クリーニング後はビニールカバーを外し、通気性の良いカバー(不織布など)に掛け替えるのがおすすめです。
4. 湿気対策と防虫対策
クローゼットや収納スペースの環境を整えることは、服を良い状態で保つために非常に重要です。
- 湿気対策:
- クローゼットや引き出しには除湿剤を置きましょう。定期的に交換が必要です。
- 天気の良い日にはクローゼットの扉を開けたり、引き出しを開けたりして換気をしましょう。
- 壁から少し離して収納家具を配置すると、風通しが良くなります。
- 防虫対策:
- 防虫剤を正しく使いましょう。防虫剤には様々な種類(パラジクロルベンゼン、ナフタリン、ピレスロイド系など)があり、それぞれ効果や使い方が異なります。使用上の注意をよく読み、指示された量を守って使いましょう。
- 無香料タイプの防虫剤や、アロマオイル(ラベンダーやシダーウッドなど、防虫効果があると言われるもの)を使った対策もあります。
- 虫は汚れや湿気を好むため、しまう前の洗濯・乾燥を徹底することが最も基本的な防虫対策です。
エシカルな視点からの保管の工夫
単に服を傷めないだけでなく、エシカルな視点を保管に取り入れることも可能です。
- 収納用品の選び方: プラスチック製の収納ケースを選ぶ際は、リサイクル素材を使用しているか、耐久性があり長く使えるものかなどを検討してみましょう。段ボール箱なども一時的な保管には使えますが、湿気に弱いため注意が必要です。
- クローゼットの中身の把握: 定期的にクローゼットや引き出しの中身を見直すことは、持っている服を再認識し、死蔵品を減らすことにつながります。これにより、必要以上に服を購入することを抑え、衝動買いを防ぐ効果も期待できます。これは「ワードローブの見直し」というエシカルな行動にも繋がります。
- 保管中のメンテナンス: 衣替えの際などに服の状態をチェックし、必要に応じてシミ抜きやほつれの補修、ボタン付けなどを行いましょう。早めに手当てすることで、服の寿命をさらに延ばすことができます。
まとめ
手持ちの服を適切に保管することは、単に物理的に服を長持ちさせるだけでなく、私たちが持っている服の価値を再認識し、物を大切にするというエシカルな精神を育む行動です。しまう前の丁寧な準備、素材に合わせた保管方法、そして湿気や虫から服を守る対策は、今日からでも実践できることばかりです。
クローゼットを開けるたびに、そこにある服たちが傷まず、美しく保たれていることを確認できるのは、ささやかですが心地よい瞬間です。この賢い保管術を日々の習慣に取り入れ、大切な服たちとの付き合いを長く豊かなものにしていきましょう。それが、エシカルファッションを自分らしく楽しむための一歩となるはずです。