手持ちの服を長く着るためのエシカルなお手入れ方法
はじめに:エシカルファッションの多様なアプローチ
エシカルファッションと聞くと、「エシカルなブランドの服を買うこと」だけをイメージされるかもしれません。しかし、エシカルファッションへの取り組み方は一つではありません。環境に配慮した素材を選ぶこと、労働者の権利が守られた工場で作られた服を選ぶこと、そして、今すでに手元にある服を大切に長く着ることも、エシカルな選択肢の一つです。
特に、これからエシカルファッションを始めたいけれど、何から手をつければ良いか分からない、あるいは予算に限りがあるという方にとって、手持ちの服を大切にすることは、すぐに始められる現実的な一歩となります。
この記事では、なぜ手持ちの服を長く着ることがエシカルにつながるのかを解説し、今日から実践できる具体的なお手入れ方法や、服を長持ちさせるための工夫をご紹介します。
なぜ「服を長く着る」ことがエシカルなのか
私たちが一枚の服を購入するまでには、素材の栽培や生産、染色、縫製、輸送など、多くの工程を経ています。それぞれの工程で、大量の水やエネルギーが消費され、化学物質が使用されることもあります。また、製造に関わる人々の労働環境や賃金が問題となるケースも少なくありません。
そして、残念ながら多くの服が一度袖を通されただけで、あるいはほとんど着られることなく廃棄されているという現実があります。服の廃棄は、埋め立てによる土壌汚染や焼却による大気汚染など、環境に大きな負荷をかけます。
手持ちの服を長く大切に着ることは、新しい服を製造する必要性を減らし、結果としてこれらの環境負荷や社会的な問題の軽減に貢献します。つまり、これは「買わない」という選択を通じて、ファッション産業の持続可能性を高めるエシカルな行動なのです。
服を長持ちさせるためのお手入れ方法
服の寿命を延ばすためには、日頃のお手入れが非常に重要です。素材に合った適切なお手入れを行うことで、服はより長く美しい状態を保つことができます。
1. 洗濯表示を確認する
服についているタグには、その服の「洗濯表示」が記載されています。これは、最適な洗濯方法、乾燥方法、アイロンのかけ方などを示す非常に重要な情報です。必ず確認し、表示に従ってケアを行いましょう。表示の意味が分からない場合は、消費者庁のウェブサイトなどで確認できます。
2. 正しい方法で洗濯する
- 洗濯の頻度を見直す: 一度着ただけですぐに洗うのではなく、汚れや匂いが気にならない場合は、数回着用してから洗濯することも検討しましょう。洗いすぎは生地を傷める原因になります。
- 素材に合った洗い方:
- デリケートな素材(シルク、ウールなど): 手洗いまたは洗濯機のドライコース・おしゃれ着コースを選び、中性洗剤を使用します。摩擦を避けるため、洗濯ネットに入れると良いでしょう。
- 綿、麻など: 通常の洗濯が可能ですが、色落ちしやすいものは他の洗濯物と分けて洗うか、洗濯ネットに入れましょう。
- 洗剤の選び方: 環境負荷の少ない石けんやエコ洗剤を選ぶことも、エシカルな選択の一つです。柔軟剤の使いすぎは、吸湿性や速乾性を損なうことがあるため注意が必要です。
- 洗濯ネットの活用: 型崩れや生地の傷みを防ぐために、洗濯ネットは積極的に使用しましょう。特に装飾のある服やデリケートな素材には必須です。
3. 乾燥方法にも気を配る
- 自然乾燥が基本: 可能であれば、直射日光を避け、風通しの良い場所で自然乾燥させましょう。乾燥機は便利ですが、高温で生地を傷めたり縮ませたりする可能性があります。
- 干し方: ニットなどはハンガーにかけると伸びてしまうため、平干しネットなどを利用するのがおすすめです。シャツなどは形を整えてから干すことで、アイロンがけの手間を減らせます。
4. 正しく保管する
- 洗濯してから収納: 汚れや湿気はカビや虫食いの原因になります。必ず洗濯してから保管しましょう。
- 通気性の良い場所: 湿気がこもらないよう、クローゼットやタンスは定期的に換気しましょう。
- 詰め込みすぎない: 服を詰め込みすぎると、シワの原因になるだけでなく、湿気がこもりやすくなります。
- ハンガーの選び方: 型崩れを防ぐために、服の形に合ったハンガーを選びましょう。特にジャケットやコートは肩に厚みのあるハンガーが適しています。
服のトラブル対処法
長く着ていると、シミや毛玉、ほつれといった小さなトラブルは避けられません。しかし、適切に対処すれば、服の寿命を延ばすことができます。
- シミ: シミは時間が経つと落ちにくくなります。できるだけ早く、シミの種類に合った方法で対処しましょう。まずは落ち着いて、洗剤を使ったつまみ洗いや、シミ抜き剤の使用を検討します。素材によっては、熱を加えると固定されてしまうシミもあるため注意が必要です。
- 毛玉: ニット製品などにできやすい毛玉は、生地が擦れることによって発生します。毛玉クリーナーやハサミで丁寧に除去しましょう。毛玉を放置すると、さらに絡み合って大きくなってしまいます。
- ほつれ、ボタンの外れ: 小さなほつれやボタンの外れは、自分で簡単に直すことができます。裁縫セットを一つ持っていると便利です。自分で直すのが難しい場合は、洋服のお直し専門店に依頼することも検討しましょう。
長く着るための「選び方」と「工夫」
購入する段階から「長く着ること」を意識することも大切です。
- 流行に左右されないデザイン: トレンドに敏感になることも楽しいですが、数年後も着られるようなベーシックなデザインや、自分のスタイルに合った服を選ぶと、自然と長く着る機会が増えます。
- 上質な素材を選ぶ: 学生で予算が限られている場合、毎回高価な服を選ぶのは難しいかもしれません。しかし、セールなどを活用して、耐久性があり、適切なお手入れで長く風合いを保てる素材の服を少しずつ取り入れていくことも一つの方法です。
- 着回しを考える: 購入前に、手持ちの服と組み合わせて何通りの着こなしができるかを考えてみましょう。着回しができる服は、登場回数が増え、結果的に一着あたりの着用コスト(コストパフォーマンス)も高まります。
まとめ:「大切に着る」ことから始まるエシカルな行動
エシカルファッションは、何も特別なことだけではありません。今持っている服に目を向け、愛情を持ってケアすることも、十分エシカルな行動です。
- 洗濯表示を確認する
- 適切な方法で洗濯・乾燥・保管する
- 小さなトラブルは早めに対処する
- 購入時には「長く着ること」を意識する
こうした一つ一つの心がけが、服の寿命を延ばし、結果として新しい服の生産・廃棄を減らすことにつながります。これは、環境や社会への負荷を減らすための、誰もが今日から始められる、身近なエシカルファッションの実践方法と言えるでしょう。
「はじめてのエシカルファッション」は、まずは手持ちの服を大切にすることから始めてみてはいかがでしょうか。